老後に必要な「最低限の生活費」の解説です。平均的な生活費ではなく、ギリギリまでの節約を想定した「最低限必要な生活費」と、準備したい「貯蓄額」の解説です。人生100年時代を想定して計算しました。やはり「持ち家」と「ふたり暮らし」が有利です。
老後の「平均的な生活費」
老後の生活費は、独身などの「ひとり暮らし」と「夫婦ふたり暮らし」で、かなり差があります。さらに「持ち家」と「賃貸」で必要な生活費が、大きく変わります。
住居費(家賃、固定資産税、修繕費など)、光熱水代、電話代、インターネット代などの固定費は、人数に関係なく必要な費用です。食費や交通費や被服費などの変動費は、人数に比例して金額が増えます。
老後の平均的な生活費は、さまざまなアンケート調査によるデータがあります。2018年現在は、おおむね次の金額が一般的です。
平均的な老後の生活費
「ふたり暮らし」月額24万円
「ひとり暮らし」月額16万円
この金額が確保できれば、老後の生活は困りません。しかし、この平均的な生活費は、かなり裕福な人たちのデータも含まれていることに注意して下さい。ひとり暮らしの生活費月額16万円は、年金に換算すると192万円です。60歳までの現役生活時代に、安定した収入のあった会社員のケースです。
自営業などの国民年金は、年額779,300円 です。月額64,941円です。ひとり暮らしの平均的な生活費月額16万円と比較すれば、毎月10万円不足します。しかし、定年のない自営業の人は、80歳くらいまで元気で働く人も多いです。
人生100年時代を考えて、80歳で自営業をやめ、残り20年間を生活するための老後資金は、10万円✕12ヶ月✕20年=2,400万円必要です。この2,400万円という金額は、多くの人にとって、現実的には確保困難な貯蓄額かも知れません。
そこで、老後の平均的な生活費ではなく、むしろ、ギリギリの節約生活を想定したときに、「最低限必要な生活費」を考えてみます。
「平均的な生活費」の内訳
平均的な「ひとり暮らし」の生活費は月額16万円です。主な内訳は次のとおりです。
月額16万円の内訳
食費 4万円
光熱水料 1万1千円
住宅費 2万8千円
医療費 6千円
交通費 1万9千円
被服・日用品 6千円
税金・社会保険料 3万円
娯楽費 2万円
住宅費が2万8千円含まれています。持ち家であれば、固定資産税と補修費に置き換えましょう。
節約可能な生活費の項目
平均的な生活費の内訳から、ギリギリまで節約可能な項目を検討しました。 → が節約後の金額です。
食費 4万円 → 3万円
光熱水料 1万1千円 → 8千円
交通費 1万9千円 → 1万円
被服・日用品 6千円 → 5千円
娯楽費 2万円 → 1万円
節約可能な項目の合計金額
月額96,000円 → 63,000円
節約できた金額は、月額-33,000円です。
節約できない生活費の項目
住宅費は、平均的な生活費の金額では、持ち家の人と賃貸の人のデータが混ざっています。そこで現実的な金額を想定します。賃貸の場合は、東京などの都心ではなく、地価の安い地方都市で計算します。持ち家の場合は、固定資産税と最小限の家屋補修費です。
住宅費 賃貸→3万円 持ち家→1万円
高齢になれば医療費が増えます。また自動車税などの税金と、国民健康保険などの社会保険料は節約不可能です。
医療費 6千円
税金・社会保険料 3万円
節約できない生活費は、「持ち家」と「賃貸」で変わります。
持ち家の人 月額46,000円
賃貸の人 月額66,000円
「最低限必要」な老後の生活費
老後に必要な最低限の生活費は、持ち家の人と賃貸の人で月額が変わります。特に賃貸アパートは、大都市以外へ引っ越すことになります。
「ひとり暮らし」に最低限必要な生活費
持ち家の人 月額109,000円
賃貸の人 月額129,000円
ひとり世帯の厚生年金の平均収入は、男性が17万円、女性が10万円です。会社員で持ち家の人であれば、年金は不足しません。
ふたり暮らしの場合は、平均的な生活費の割合から算出します。平均的な生活費が、「ひとり暮らし」月額16万円、「ふたり暮らし」月額24万円です。割合を求めると、24÷16=1.5です。つまり、「ひとり暮らし」の1.5倍が、「ふたり暮らし」最低限の生活費です。
「ふたり暮らし」に最低限必要な生活費
持ち家の人 月額163,500円
賃貸の人 月額193,500円
夫婦ふたりの年金収入平均額は、月額22万円です。節約した生活であれば、老後の生活費が不足することはありません。
「国民年金」だけでは不足する額
2018年現在の国民年金は、779,300円です。月額は64,941円です。収入が国民年金だけのときに不足する月額を()書きします。
「ひとり暮らし」に最低限必要な生活費(不足額)
持ち家の人 月額109,000円(−44,059円)
賃貸の人 月額129,000円(−64,059円)
ふたり暮らしの国民年金は、ふたり合わせて月額129,882円です。不足額の()書きは次のとおりです。
「ふたり暮らし」に最低限必要な生活費(不足額)
持ち家の人 月額163,500円(−33,618円)
賃貸の人 月額193,500円(−63,618円)
()書きの不足額は、ふたり分の合計額です。ひとり暮らしに比較して、負担は半分以下です。老後の生活は、ふたり暮らしの方が経済的にも断然有利です。
まとめ、「最低限必要」な老後資金・貯蓄
上記の計算例のように、厚生年金の収入がある世帯は、老後の年金は不足しません。そこで、国民年金だけの場合をまとめました。
人生100年時代を考えると、会社を定年退職した後の生活月数は、60歳から100歳までの40年間です。月数は480月です。
しかし、収入が国民年金だけの人は、そもそも定年はなく、80歳まで現役で働けます。80歳から100歳までの20年間で、月数は240月です。80歳で現役を退き、節約した生活に入るとすれば、次の金額が不足します。自営業の人が、80歳までの現役時代に、貯金したい老後資金です。
「ひとり暮らし」に必要な貯蓄額
国民年金の不足月額✕240月=貯蓄額
持ち家の人 月額44,059円✕240月=10,574,160円
賃貸の人 月額64,059円✕240月=15,374,160円
つまり、収入が国民年金だけで「ひとり暮らし」の場合、持ち家なら1,000万円、賃貸なら1,500万円の貯蓄が必要です。
「ふたり暮らし」に必要な貯蓄額
国民年金の不足月額✕240月=貯蓄額
持ち家の人 月額33,618円✕240月=8,068,320円
賃貸の人 月額63,618円✕240月=15,268,320円
国民年金収入だけで「ふたり暮らし」の場合、持ち家であれば800万円、賃貸なら1,500万円が不足します。いずれも「夫婦ふたり」の合計貯蓄額です。
老後のことを考えると、「ふたり暮らし」が断然有利です。独身の人には結婚をおすすめします。