いよいよ試験本番が近づいてきましたね。これまでの努力を最大限に発揮するためには、試験中の集中力はもちろんですが、実は「休憩時間の過ごし方」が合否を分けると言っても過言ではありません。
多くの人は、休憩時間を単なる「待ち時間」や「お喋りの時間」として消費してしまいがちです。しかし、私の経験やこれまでの調べによれば、この数十分間こそが、次の科目のパフォーマンスを決定づける重要な「メンテナンスタイム」なのです。
パソコンやスマホでも、長時間高負荷な処理を続ければ本体が熱を持ち、動作が重くなりますよね。人間の脳も全く同じです。試験という超高負荷なタスクの合間に、いかに効率よく熱を逃がし、メモリ(脳のワーキングメモリ)を解放できるか。これこそが、後半戦の集中力を維持するカギとなります。
今回は、精神論や根性論ではなく、あくまで「効率」と「最適化」を重視する視点から、試験当日の休憩時間の戦略的な過ごし方について、徹底的に掘り下げてみたいと思います。私が実際に試し、効果を実感した方法を中心に、科学的な裏付けも交えながら解説していきます。「あと1点」をもぎ取るための、秘密の作戦会議を始めましょう。
試験における休憩時間の本質とは「脳の再起動」である
まず、休憩時間の定義を変えることから始めましょう。多くの受験生にとって、休憩時間は「暇な時間」か「友人と答え合わせをする時間」になりがちですが、これは非常に勿体ない、あるいは危険な行為です。

脳の「キャッシュ」をクリアする重要性
試験中の脳は、凄まじい勢いで情報の検索と処理を行っています。例えるなら、ブラウザでタブを100個くらい開いて動画編集をしているような状態です。試験が終わった直後の脳内には、直前の問題の内容や「あの答えで合っていたかな?」というノイズ(キャッシュ)が大量に残っています。
このキャッシュが残ったまま次の科目に挑むのは、メモリ不足のPCで重いゲームを起動するようなものです。動作がカクつき、本来のスペックを発揮できません。休憩時間の最大のミッションは、この「前の科目のキャッシュ」をきれいに消去し、次の科目のために脳の容量を空けることなのです。
最近の研究でも、脳の疲労回復には、意識的に情報を遮断する時間が有効であると言われています。ボーッとする時間は、決して無駄な時間ではなく、脳のネットワークを整えるために不可欠なプロセスなのです。
「答え合わせ」という最大のバグ行為
ここで声を大にして言いたいのが、「終わった試験の答え合わせは絶対にしない」という鉄則です。友人と「問3の答え、2だよね?」と話した瞬間に、あなたの脳内には「終わったはずの試験」が再ロードされてしまいます。
もし自分の答えが間違っていたらどうなるでしょうか。「やってしまった」という後悔や焦りが、強烈なウイルスのように思考を乗っ取ります。これでは次の科目への切り替えどころではありません。メンタルが不安定になり、本来解けるはずの問題まで落としてしまうリスクがあります。
試験会場では、周りの受験生が答え合わせをしている声が聞こえてくるかもしれません。そんなときは、ノイズキャンセリング機能を持ったイヤホン(あるいは物理的な耳栓)を装着し、物理的に情報を遮断することをおすすめします。自分のシステムを守るためのファイアウォールを築くのです。
パフォーマンスを最大化する「戦略的」な過ごし方
では、具体的に何をして過ごすべきか。私が実践し、推奨する「最適化ルーティン」をいくつか紹介します。
五感を遮断して「省電力モード」に入る
現代人は視覚からの情報入力が多すぎます。特に試験会場は、慣れない場所、知らない人々、緊張感といった視覚情報に溢れており、ただ目を開けているだけで脳のエネルギーを消費しています。
おすすめのアクションは、「自分の席で目を閉じる」ことです。これだけです。眠る必要はありません。視覚情報をシャットダウンするだけで、脳の処理リソースが大幅に節約されます。この時、深呼吸を組み合わせるとさらに効果的です。4秒吸って、4秒止めて、8秒で吐く。これを数回繰り返すだけで、副交感神経が優位になり、高ぶった神経を鎮めることができます。
「トイレ」は戦略的に利用する
試験会場のトイレは混雑します。並ぶこと自体がストレスや焦りの原因になりかねません。しかし、座りっぱなしで血流が悪くなった身体を動かすチャンスでもあります。
あえて少し遠くのトイレや、別の階のトイレに行くのも一つの手です。歩くことでふくらはぎのポンプ機能が働き、脳への血流が促進されます。また、冷たい水で手を洗うことも、気分のリフレッシュ(スイッチの切り替え)に非常に有効です。鏡で自分の顔を見て「大丈夫、落ち着いている」と自己暗示をかけるのも、心理学的に効果があるテクニックの一つです。
栄養補給は「血糖値」のコントロールが命
休憩時間の飲食も戦略が必要です。脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖ですが、摂り方を間違えると逆効果になります。ここで注意したいのが「血糖値スパイク」です。
甘いパンやおにぎりを一気に食べると、血糖値が急上昇し、その反動で急降下します。この急降下のタイミングで強烈な眠気や集中力の低下が襲ってきます。これを防ぐためには、「低GI食品」や「消化の良いもの」を「少しずつ」摂ることがポイントです。
私が愛用していたのは、ブドウ糖そのもののタブレットや、高カカオチョコレートです。これらを試験開始の30分〜1時間前くらいに少量摂取することで、試験本番のタイミングに合わせてエネルギーを供給するように調整していました。ガッツリ食事をとるのではなく、必要な燃料を必要な分だけ注入するイメージです。
絶対に避けるべき「システムエラー」の要因
次に、多くの受験生が無意識にやってしまっているけれど、実はパフォーマンスを著しく低下させるNG行動について解説します。これらは脳に不要な負荷をかけ、システムエラーを引き起こす要因となります。
スマホという名の「ドーパミン・トラップ」
休憩時間にスマホを見る。これは現代において最も避けるべき行為の一つです。SNSやニュースサイトは、脳の報酬系を刺激し、ドーパミンを放出させます。一見リラックスしているように感じるかもしれませんが、脳は興奮状態にあり、情報の処理に追われています。
さらに恐ろしいのは「アテンション・レジデュー(注意の残留)」という現象です。スマホで見た強い刺激の情報(例えば友人のSNS投稿やネガティブなニュース)は、スマホを置いた後も脳の片隅に残り続け、試験中の集中力を阻害します。「ちょっとだけ」のつもりが、大切な試験時間を侵食してしまうのです。
試験当日は、緊急の連絡以外はスマホの電源を切るか、カバンの奥底に封印しておくのが正解です。「デジタルデトックス」を強制的に行うことで、脳のリソースを試験のみに集中させることができます。
参考書の「悪あがき」
休憩時間に参考書を必死に読み込んでいる人を見かけますが、これも良し悪しです。直前に見た単語がたまたま出るというラッキーはあるかもしれませんが、新しい情報を詰め込もうとして焦りが生じるリスクの方が高いと私は考えます。
もし何かを見るとすれば、自分が使い込んでボロボロになったノートや、「これだけは覚える」と決めていたまとめメモをパラパラと眺める程度に留めるべきです。これは知識のインプットというより、「ここまでやったんだから大丈夫」という精神安定剤としての役割が強いです。脳に負荷をかける「勉強」ではなく、自信を取り戻す「確認」に徹しましょう。
時間別・最適化シミュレーション
休憩時間の長さによって、最適な行動パターンは異なります。ここでは、短い休憩と長い昼休みの2パターンで、私が推奨するシミュレーションを紹介します。
ケースA:10分〜15分の短い休憩
この時間は「リセット」に特化します。
- 0〜2分: 教科書や筆記用具を片付け、机の上を整理する。視覚的なノイズを消す。
- 2〜5分: トイレに行く、または軽く背伸びをする。血流を回す。
- 5〜10分: 席に戻り、目を閉じて深呼吸。脳のアイドリング状態を作る。水分を一口だけ摂る。
- 試験直前: 「次の科目もいつも通り解く」と自分に言い聞かせ、戦闘モードへ移行。
ケースB:60分の昼休憩
この時間は「エネルギー補給」と「回復」がメインです。
- 0〜15分: 軽めの食事。炭水化物を摂りすぎない(おにぎり1個+サラダチキンなど)。よく噛んで脳を刺激する。
- 15〜35分: 仮眠(パワーナップ)。突っ伏して目を閉じるだけでOK。20分以上寝ると深い睡眠に入り、起きた時にダルくなるので注意。カフェインを摂ってから寝ると、起きる頃に覚醒効果が出る(コーヒーナップ)というテクニックも有効です。
- 35〜50分: 軽い散歩や外の空気を吸う。会場内の熱気から離れ、リフレッシュする。
- 50〜60分: 席に戻り、次の科目の準備。深呼吸で心拍数を整える。
便利アイテムで環境をハックする
最後に、私が試験当日の休憩時間を快適に過ごすために役立つと感じた、ちょっとしたアイテム(ガジェット的な視点も含めて)を紹介します。
アナログ時計
普段はスマホで時間を確認している人も多いでしょう。しかし、前述の通りスマホは情報の濁流です。時間管理のためだけにスマホを見ると、つい通知が目に入ってしまいます。休憩時間の管理は、シンプルなアナログ腕時計で行うのがベストです。試験中も使えますし、何より「残り時間を視覚的に把握しやすい」というメリットがあります。
温度調整できる衣服(レイヤリング)
試験会場の空調はコントロールできません。暑すぎたり寒すぎたりすると、それだけで脳のパフォーマンスが落ちます。カーディガンやパーカーなど、脱ぎ着しやすい服を用意し、休憩時間に体温調整を行うことも立派な戦略です。頭寒足熱を意識し、ひざ掛けなどを使うのも良いでしょう。
まとめ:休憩を制する者が試験を制する
試験当日は、誰もが緊張し、不安になります。しかし、そのプレッシャーの中で本来の実力を発揮できるのは、自分の心と体の状態を客観的に観察し、適切にメンテナンスできた人だけです。
「勉強する」ことと同じくらい、「休む」ことに真剣になってみてください。脳のキャッシュをクリアし、バッテリーを適切にチャージし、不要なアプリケーション(不安や雑念)を閉じる。そうすれば、あなたの脳はきっと、試験終了のチャイムが鳴るその瞬間まで、最高の処理能力を発揮し続けてくれるはずです。
皆さんの検討を祈っています。いつもの調子で、淡々と、最適解を導き出してきてください。
