無職になったときの「老後の生活費」についての解説です。国民年金だけのケースで、毎月不足する金額と、それを補填するには定年までにいくらの貯蓄額が必要か解説します。また、過去の老齢基礎年金額の推移と、今後の公的年金制度のリスクを説明します。
老後に必要な、毎月の生活費と貯蓄
老後に対する不安の中で、一番大きな部分は、やはり経済的な金銭面です。
老後の家計についての不安が大きいです。60歳以上になり収入がなくなったときの生活費についてのアンケート調査があります。平均的な老後の生活費と考えられます。(総務省統計局の2018年2月16日データ)
60歳以上の毎月の平均的な生活費です。
家賃や税金などすべての費用を含む額です。
独身者 毎月16万円
夫婦二人 毎月27万円
老齢基礎年金は、月額6万5千円です。もし、自営業などで、この老齢基礎年のみなら不足額は次のようになります。
国民年金(老齢基礎年金)だけの場合の不足額
独身者 毎月10万円
夫婦二人 毎月14万円
この不足額は、貯蓄を取り崩すか何かの収入を得るしかありません。
仮に100歳まで生きるとすれば、定年の60歳から100歳までの40年間に必要な貯蓄額は次のとおりです。
独身者 毎月10万円×12月×40年間=4,800万円
夫婦二人 毎月14万円×12月×40年間=6,720万円
国民年金の推移
65歳からもらえる老齢基礎年金(国民年金)について、今までの推移を確認します。
年代別に、その年代に一年間にもらえた年金額です。老齢基礎年金部分です。時代とともにお金の価値が変わるので、年金額の隣に消費者物価指数を()書きで記載しました。2018年を100とした指数です。
過去の年金額の推移(消費者物価指数)
1年間にもらえる老齢基礎年金の総額
2018年4月〜779,300円 (100)
1999年4月〜804,200円 (103.1)
1986年4月〜 622,800円 (88.3)
1980年 504,000円 (75.6)
1976年 390,000円(59.9)
1969年 96,000円( 32)
1961年 24,000円 (20)
公的年金の破綻リスクは?
過去の年金額(老齢基礎年金)の推移を見ると、年金額が減っているわけではないことが明らかです。
1969年の年金額は96,000円ですが、そのときの消費者物価指数は32です。2018年現在の物価に補正すれば、およそ3倍なので、300,000円の年金額です。現在の半分以下の年金額でした。(参考、大卒初任給は、1969年 34,100円、2018年 206,333円です。およそ大卒初任給の3倍です。)
これらを見ても、公的年金の基本部分である老齢基礎年金は、きちんと守られていると考えられます。
マスコミなどで、公的年金はあてにならないとか、国民年金保険料は払うだけ損するような報道がありますが、それほど政府は杜撰ではありません。
将来的な少子高齢化と財政赤字で、公的年金制度が破綻するということを話す人もいますが、日本人はそれほど馬鹿ではないはずです。
老齢基礎年金を含めた公的年金全体の支払額は、年間およそ50兆円です。そのうち30兆円は厚生年金保険料で賄われていますから、毎年の不足分は20兆円です。政府予算は約100兆円です。年金の不足分は、それほど多くの割合を占めていません。
もちろん、その時代の政権の考え方によりますが、公的年金が破綻するとは思えません。経済が成長できれば、財政赤字も直るのです。