気がつけばもう年末。大掃除や買い出しに追われ、「今年もあっという間だったな」と感じている方も多いのではないでしょうか。
新しい年を迎える準備、進んでいますか?
私たちは毎年当たり前のように「あけましておめでとう」と言い、おせちを食べ、初詣に行きます。でも、ふと立ち止まって考えてみてください。「そもそも、なぜお正月を祝うの?」「門松や鏡餅にはどんな意味があるの?」
実は、これらの一つひとつには、ご先祖様たちが込めた「幸せへの深い願い」が隠されているのです。その意味を知っているのと知らないのとでは、お正月の過ごし方、そして受け取れる「福」の大きさが変わってくるかもしれません。
今回は、知っているようで知らない「お正月の由来」について、ときめきを感じるような発見とともにお届けします。2026年を最高のスタートにするために、日本の美しい伝統を紐解いていきましょう。
お正月は「年神様」をお迎えする特別な期間
お正月とは、単に新しい年になったことを祝うだけの行事ではありません。その核心は、「年神様(としがみさま)」という神様を家にお迎えし、おもてなしすることにあります。

年神様(としがみさま)とはどんな神様?
年神様は、元旦に高い山から降りてきて、それぞれの家に「新しい年の幸福」と「生きる力(魂)」を授けてくれる神様です。「歳徳神(としとくじん)」や「正月様」とも呼ばれます。
その正体は、実は「ご先祖様の霊」と「穀物の神様」が合わさった存在だと考えられています。
昔の日本では、亡くなった人の魂は山へ行き、長い年月を経て神様(祖霊神)になり、お正月になると子孫の繁栄を見守るために家へ帰ってくると信じられていました。また、稲作中心の日本において「年」という言葉は「稲の実り」を意味します。つまり年神様は、五穀豊穣と家族の健康を約束してくれる、とてもありがたい存在なのです。
お正月に家族みんなが集まって過ごすのは、帰ってきたご先祖様(年神様)と一緒に食事をし、絆を深めるためだったのですね。
「元旦」と「元日」の違いを知っていますか?
お正月の挨拶状などでよく見る「元旦」と「元日」。同じ意味で使われがちですが、厳密には違いがあります。
元日(がんじつ): 1月1日の「1日全体」のこと。
元旦(がんたん): 1月1日の「朝(夜明け)」のこと。
「旦」という字は、太陽(日)が地平線(一)から昇ってくる様子を表しています。ですから、年賀状に「一月一日 元旦」と書くのは、「一月一日の朝」という意味が重複してしまうので、実は少し不自然なのです。「令和八年 元旦」とするのがスマートですよ。
お正月の伝統的な飾りの由来と意味
年末になると準備するお正月飾り。これらは単なるインテリアではなく、年神様をお迎えするための重要な「装置」としての役割を持っています。
門松(かどまつ):神様の目印
門松は、年神様が迷わずに家へ来てくれるための「目印」であり、神様が降りてくるためのアンテナ(依り代)です。
松は「祀る(まつる)」に通じ、一年中緑を絶やさないことから「長寿・不老不死」の象徴。竹はまっすぐ天に向かって伸びることから「成長・繁栄」。梅は春に先駆けて花を咲かす「生命力」の象徴です。これら縁起の良い植物を組み合わせて、家の前に飾ります。
最近は集合住宅などで飾るのが難しい場合もありますが、小さな略式の門松や、松の枝を一本飾るだけでも、神様への「お待ちしています」というサインになりますよ。
しめ飾り(しめかざり):神聖な場所への結界
しめ飾りは、家の中が清らかな場所であることを示す「結界」の役割を果たします。「ここは年神様をお迎えするのにふさわしい、神聖な場所ですよ」と示し、災いや不浄なものが入り込まないようにガードしているのです。
その由来は日本神話の「天岩戸(あまのいわと)」伝説にあると言われています。天照大神が岩戸から出てきた際、二度と隠れてしまわないように「しめ縄」を張ったことが起源とされています。
飾る場所は玄関が一般的ですが、神棚や水回りにも飾る地域があります。飾る時期は、12月13日の「事始め」以降ならいつでも良いとされますが、現代ではクリスマスが終わった26日頃から28日までに飾るのがスムーズです。29日(二重苦)と31日(一夜飾り)は避けるのがマナーです。
鏡餅(かがみもち):神様の依り代
家の中に迎え入れた年神様が、お正月の間ずっと鎮座する「居場所(依り代)」となるのが鏡餅です。
昔の鏡(銅鏡)は丸い形をしており、神様の宿る神聖なものとされていました。お餅をその鏡に見立てているため「鏡餅」と呼ばれます。また、大小2つの餅を重ねることで「陰と陽(月と太陽)」を表し、円満に年を重ねるという意味も込められています。
上に乗っている橙(だいだい)は、「代々(だいだい)家が繁栄しますように」という語呂合わせの願いが込められています。
おせち料理とお屠蘇の深い意味
お正月といえば、やっぱり美味しい料理。おせち料理にも、一つひとつに深い意味があります。
おせち料理は「神様へのお供え」
本来「おせち(御節)」は、季節の節目(節句)に神様にお供えする料理「御節供(おせちく)」のことでした。江戸時代になり、一年で一番大切な節目であるお正月の料理だけを特別に「おせち」と呼ぶようになりました。
おせちを重箱に詰めるのは、「めでたいことを重ねる(積み重ねる)」という意味があります。正式には五段重ですが、現在は三段重などが一般的です。
代表的な具材に込められた願い
おせちに入っている具材の由来を知ると、箸を運ぶのがもっと楽しくなります。
黒豆: 日に焼けて真っ黒になるまで、マメ(勤勉)に働き、マメ(健康)に暮らせますように。
数の子: ニシンの卵。卵の数が多いことから、子孫繁栄の願い。
田作り(ごまめ): 片口イワシの稚魚。昔はイワシを田んぼの肥料にしていたことから、五穀豊穣を願って。
海老: 腰が曲がるまで長生きできますように(長寿)。
栗きんとん: 黄金色に輝く財宝に例えて、金運上昇や商売繁盛。
昆布巻き: 「喜ぶ(よろこんぶ)」の語呂合わせ。
伊達巻: 巻物の形に似ていることから、知識が増えますように(学業成就)。
紅白かまぼこ: 紅は魔除け、白は清浄。形が日の出に似ていることから新しい門出を象徴。
れんこん: 穴がたくさん空いていることから、「将来の見通しが良い」ように。
お屠蘇(おとそ)で邪気を払う
お正月に飲む祝い酒「お屠蘇」。単なる日本酒ではなく、数種類の生薬(山椒、肉桂、防風など)を漬け込んだ薬草酒です。
その名前には「邪気を屠(ほふ)り、魂を蘇(よみがえ)らせる」という意味があります。飲むことで一年間の邪気を払い、家族の健康を願います。本来は、年少者から年長者へと順番に回して飲み、若い活力を年長者に分け与えるという意味合いもありました。
お年玉と初詣のルーツ
子どもたちが楽しみにしているお年玉、そして新年の恒例行事である初詣。これらのルーツも意外なところにあります。
お年玉はもともと「お餅」だった?
実は、昔のお年玉は「お金」ではありませんでした。その正体は「お餅」です。
先ほど触れたように、鏡餅には年神様の魂(生きる力)が宿っています。お正月の終わりに、家長がそのお餅を割り、「神様の魂の分け前」として家族みんなに配ったのが始まりです。「年の魂(としのたま)」だから「年玉(としだま)」と呼ばれるようになったのです。
これが江戸時代になると、手ぬぐいや筆などの品物を贈るようになり、昭和の高度経済成長期ごろから、都市部を中心に現在のような「現金」を渡すスタイルが定着したと言われています。形は変わっても、目上の人から目下の人へ「一年を生きる力」を分け与えるという意味は変わっていません。
初詣は「恵方参り」が起源
現在の初詣の形が定着したのは、実は明治時代以降と比較的最近のことです。鉄道網の発達により、有名な神社仏閣へ気軽に行けるようになったことが大きな要因です。
それ以前は、「恵方参り(えほうまいり)」や「年籠り(としごもり)」が主流でした。
恵方参りとは、その年の年神様がいる方角(恵方)にある神社にお参りすることです。また、大晦日の夜から元旦の朝にかけて、地元の氏神様の神社にこもって祈願する「年籠り」という習慣もありました。
これが次第に簡略化され、元旦や三が日に好きな神社へお参りする現在の「初詣」のスタイルになりました。
いつまでがお正月?松の内・七草・鏡開き
「お正月気分もここまで」と区切りをつけるタイミングには、地域差や伝統的な日付があります。
「松の内」の期間は関東と関西で違う
年神様がいらっしゃる期間、つまり門松を飾っておく期間を「松の内(まつのうち)」と呼びます。
関東など: 1月7日まで
関西など: 1月15日まで
かつては全国的に1月15日まででしたが、江戸時代に江戸幕府から「火事の延焼を防ぐため、燃えやすい飾りは早く片付けるように」というお触れが出され、江戸を中心に7日まで短縮されたと言われています。
1月7日は「七草粥」で胃を休める
1月7日の朝には「春の七草(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ)」を入れたお粥を食べます。
これは、お正月のご馳走やお酒で疲れた胃腸を休めるための先人の知恵であり、冬に不足しがちなビタミンを補給して無病息災を願う行事です。
1月11日は「鏡開き」で力をいただく
年神様にお供えしていた鏡餅を下げて、お汁粉やお雑煮にして食べるのが「鏡開き」です。
一般的には1月11日に行われます(関西では1月15日や20日の場合もあります)。
ここで大切なマナーがあります。それは「包丁などの刃物を使わない」こと。
鏡餅は年神様の魂が宿っている場所なので、刃物を入れるのは神様に対して失礼にあたります。また、武家社会において「切る」ことは切腹を連想させ縁起が悪いとされたため、木槌(きづち)などで叩いて割るようになりました。「割る」という言葉も避けて「開く」という縁起の良い言葉を使います。
固くなったお餅を食べて初めて、年神様の力を体に取り込むことができ、お正月の一連の行事が完了するのです。
まとめ:由来を知って、2026年を心豊かに迎えよう
お正月の由来を知ると、これまで何気なく行っていた習慣の一つひとつに、家族の幸せや健康を願う温かい心が込められていることに気づきます。
門松は、神様への「目印」。
鏡餅は、神様の「居場所」。
おせちは、神様への「お供え」。
お年玉は、神様からの「魂のおすそわけ」。
形は時代とともに変化していますが、そこに込められた「今年も良い年になりますように」という祈りは変わりません。
2026年のお正月は、ぜひこうした由来を家族や友人と話しながら過ごしてみてください。「これはね、神様の目印なんだよ」と話すだけで、いつものお正月がもっと味わい深く、ときめく時間に変わるはずです。
皆様にとって、2026年が素晴らしい一年となりますように。
