安倍首相が、突然、辞任を表明をしました。病気が再発し、2回目の辞任表明になりました。次期総裁候補として石破氏と岸田氏が有力と見られていました。ところが、菅氏が一気に支持を集め、事実上、次期総裁候補に決まりました。支持を集めた理由がわかりました。
安倍首相 辞任の意向 速報テロップ
2020年8月28日(金)、14時7分、NHKテレビでニュースの最中に、安倍首相が辞任する意向との速報テロップが流れました。
NHK 列島ニュース 14時7分
放映中のテロップ「安倍首相 辞任の意向固める 持病悪化で国政への支障を避けたい」
日経平均株価も700円ほど下落しました。安倍首相は7年8ヶ月の長期政権です。確かに体調不安説もありましたが、まさか2回も辞任するとは思いませんでした。
17時からは、安倍首相自身による記者会見が行われました。
辞任の理由は、難病の「潰瘍性大腸炎」の再発です。先月から体調が良くなく、検査したところ、病気の再発が判明しました。治療を続けながら、内閣総理大臣を続けるのは無理と、月曜日(8月24日)に判断したようです。
体調不安説
8月中旬頃から、安倍首相の健康を心配する、各大臣の発言が増えていました。8月16日(日)には、甘利 明 税制調査会長が、「強制的にでも休ませたい」と発言しています。8月17日(月)夜には麻生副総理が、「147日休まずに働いているので、休む必要がある」と話しています。
そして、安倍首相は、8月17日(月)と24日(月)に慶応大学病院を受診しました。
ニュースを見ていて、私自身、「総理の体調は、かなり深刻のようだ」と思っていました。おそらく多くの人も、同じように感じていたはずです。
2007年の辞任表明
安倍首相は、2007年9月12日にも、突然、辞任表明をしています。2日前の臨時国会で所信表明演説を行った直後でした。多くの人が「なんで?」と思いました。
辞任理由は、テロ対策特別措置法(海上自衛隊のインド洋派遣)の局面を打開するためとのことでした。翌日から慶応大学病院へ入院し、24日に退院、しばらくしてから、記者会見で健康上の理由「機能性胃腸症」から辞任したことを説明したのです。
この当時は、やはり「政権を投げ出した」「仕事を放り出した」という批判があり、「無責任な姿勢」を問題視する報道もありました。
私は、さすがにいくらなんでも「2回も辞任しない」だろうと思っていました。しかし辞任せざるを得ない状態になったことを考えれば、よほど身体が辛かったのでしょう。
安倍首相自身が、誰よりも悩み苦しみ、本当に悔しいのではないでしょうか。
コロナ禍の中で、憲法改正も進められず、オリンピックも出席できないわけです。やり残したことが山ほどあります。安倍首相自身が、一番辛いはずです。
「首相」、「総理」、「総裁」の違い
安倍首相の辞任表明を受けて、テレビでは次期総裁候補選びの報道が盛んに行われています。ニュースを聞いていると、「首相」、「総理」、「総裁」などの呼び方があり、少しわかりづらいです。そこで、呼び方の違いを解説します。
「首相」は、「総理」と同じ意味です。内閣総理大臣のことで、日本の行政組織(政府)のトップです。
「総裁」は、自民党のトップです。現在は自民党が政権を担っているので、「総裁」は「総理」と同じ人です。
「首相」の「相(しょう)」という文字は、大臣を意味します。外務大臣を外相、財務大臣を財相などと呼びます。首相は、内閣総理大臣のことです。
正式名称は、「内閣総理大臣」です。略して「総理」と呼びます。話し言葉としては「総理大臣」や「総理」が多いです。テレビニュースで流れるテロップなど、文字として表現するときに「首相」が使われます。
安倍首相の記録
安倍首相の記録は、とてつもなく凄いです。これほど安定した長期政権は、今までありませんでした。 (以下、敬称略)
連続在職日数 2020年8月24日で2,799日 佐藤栄作の記録を更新
1位 安倍晋三 2,799日
2位 佐藤栄作 2,798日
3位 吉田茂 2,248日
4位 小泉純一郎 1,980日
5位 中曽根康弘 1,806日
通算在職日数 2019年11月20日で2887日 桂太郎の記録を更新、憲政史上最長
1位 安倍晋三 2,887日
2位 桂 太郎 2,886日
3位 佐藤栄作 2,798日
4位 伊藤博文 2,720日
5位 吉田 茂 2,619日
安倍首相の華麗なる一族
政治家としてエリートの家系です。庶民とは異なります。
大叔父 佐藤栄作
祖父 岸 信介
父 安倍晋太郎
親戚
吉田茂、麻生太郎、宮澤喜一、鈴木善幸
次期総裁候補の噂
2020年8月30日現在、安倍首相の後継候補として名前が挙がっているのは、石破 元幹事長、岸田 政調会長、菅 官房長官です。以下は、管理人が個人的に感じていることです。
岸田 文雄 政調会長 63歳 早稲田大学法学部
日本の顔として、見た目の順番からすれば、岸田政調会長がダントツです。日本のトップにふさわしい外見です。
しかし人柄が良さすぎて「決断力が不足する」と言われています。おそらく優しい性格から、相手のことを信頼してしまうのでしょう。「本当に良い人」というオーラが溢れています。
しかし内閣総理大臣ともなれば、国会対応、外交や防衛など、一瞬の決断力が必要になります。判断が遅れれば、国民が露頭に迷うことになります。決断力という点で心配が残ります。
石破 茂 元幹事長 63歳 慶応大学法学部
実力から言えば、申し分ないでしょう。しかしマニアックすぎて、話していること言葉が、よく分かりません。本人は丁寧に説明しているつもりなのでしょうが、説明が長すぎて何が言いたいのか、よく分からないです。説明が長いと「面倒くさい人」と思われてしまいます。トップに立つ人は、歯切れの良い、短いセンテンスで発言してもらいたいです。それと笑顔が似合わないというイマイチな感じがします。国民の声を聞いて、真摯に取り組む姿勢は感じますが、いまひとつ爽やかさに欠けます。
菅 義偉(すがよしひで)内閣官房長官 71歳 法政大学法学部
安倍首相の政策を引き継ぐという点では、最も適任です。
しかし逆に、安倍首相在任中に生じた未解決の問題について、うやむやになってしまうでしょう。森友問題、加計問題は、ほとんどの国民が納得していません。やはり明確に責任を追及すべきです。財務省職員を死亡させた事件なのです。安倍首相が直接関係していないことは明らかです。しかし、自身の出世のために虚偽の国会答弁を行ったり、虚偽の書類作りをした人たちを許してはいけません。国民に対して嘘をつく公務員や政治家を許してはいけないのです。責任を追及しない政府は、どう考えても正常とは思えません。
次期総裁候補への動き
安倍首相が辞任する、という情報が流れた8月28日当初は、次の総裁候補として真っ先に名前が挙がったのは、岸田氏と石破氏です。多くの人が「岸田氏と石破氏の一騎打ちになる」と思ったはずです。その後、各派閥でさまざまな名前が挙がり、菅氏の名前も聞くようになりました。
ところが、8月30日頃から、一気に菅氏を支持する流れになります。どうやら、安倍首相が次の総裁として菅氏を推薦したようです。すぐに二階幹事長が支持を表明しました。その後、「勝ち馬に乗る」かのように、麻生派、細田派などが菅氏の支持を表明しています。そして、ほとんどの派閥が、菅氏を支持することになりました。9月1日には、事実上、菅総裁で決定です。
菅首相への流れは、一気に決まりました。
しかし不思議なのが、最初の頃は、菅氏自身も全く考えていなかったことです。
なぜ一気に菅氏を支持する動きになったのでしょうか?
噂によれば、安倍首相には、石破氏を阻止したい強い思いがあったようです。でも、それであれば、岸田さん支持で良いわけです。そもそも以前は、安倍首相は「岸田氏への禅譲」を考えていると言われてました。岸田氏を支持しないとなれば、何か理由があるはずです。
なぜ「岸田氏へ禅譲」しなかったか
なぜ菅氏になったか、ということを考えると、キーワードがわかってきました。
森友・加計問題です。
私自信は、安倍首相は、森友問題も、加計問題も、全く関わっていないと思っています。安倍首相は、政治家としてエリートの家系なわけです。特定の人に便宜を図れば、国民を裏切ることになり、必ず「ばれる」とわかっていたはずです。エリート政治家で倫理観の高い人なわけですから、そんなことをするはずもありません。
おそらく安倍首相が嫌ったのは、後任総理が、森友・加計問題をほじくり返すことではないでしょうか。
石破氏であれば、国民が納得していない部分は、徹底的に再調査するでしょう。また岸田氏は、やさしい人なので、国民の声が強くなれば、仕方なく森友・加計問題を再調査するでしょう。
森友・加計問題をほじくり返して、無駄な時間を過ごしたくないという意味では、菅官房長官以外に、選択肢はなかったのではないでしょうか。
森友・加計問題については、本来、責任を徹底的に追及すべきです。
「国民のために働く」という考えを持たずに、首相に気に入られようと、自分の出世しか考えない高級官僚や政治家たちを許してはいけません。
国民を無視して、自分の出世のために、国会で虚偽の答弁をしたり、政治家の名前を利用して、相手を恫喝するようなことは、決して許されません。そのようなことを行った高級官僚や政治家に対して、重い処分を徹底的に行うべきです。解雇は当然のこと、退職手当も支給すべきではありません。
国会で嘘をつく行為は、「国民を騙している」ことになります。泥棒と同じです。そんな人たちが高級官僚や政治家として在職していること自体、大問題です。森友問題では、会計検査院も役に立たないことが証明されています。
この当たり前のことを、ほじくり返されるのが嫌だったのではないでしょうか。石破氏なら徹底的に調査します。岸田氏も世論に押されるでしょう。そういった意味では、菅氏しか選択肢がなかったのかもしれません。
菅官房長官が、一気に支持を集めるまでの経緯
8月28日(金)
午前10時過ぎ、安倍首相は、総理官邸で閣議
閣議終了後、安倍首相は麻生副総理と約30分一対一で会談
午後1時から、新型コロナに関する政府対策本部、新たなコロナ対策の取りまとめ
午後2時 自民党本部で臨時の役員会を開催。安倍首相が辞任の意向を伝えた。
午後2時7分、NHKが速報で流す。
その後、安倍首相は、公明党の山口代表と会談
午後4時 安倍首相は、総理官邸で臨時閣議を開き、辞任の意向を伝えた。
午後5時から安倍首相の記者会見
ポスト安倍候補への意欲について
石破 茂 元幹事長
驚きましたね。
総裁選は、20人が推してくれなきゃ、そもそも出られないわけです。
国民がどのように考えておられるか、それと乖離するようなことがあってはいかん、ということです。
岸田 文雄 政調会長
派閥の緊急会合を開催、安倍総理から直接連絡があったことを伝え、結束を呼びかけた。
自分の立候補よりも、今は敬意と感謝を申し上げること、これが先ではないか、その上で強い思いは変わりません。
小泉進次郎 環境大臣
総理は、一人でできる仕事ではありません。仲間が必要です。そういう仲間が支えてくれなければスタート地点には立てません。
次の総裁・総理が誰であっても、私は全党員に投票の機会があることが一番いいと思います。
安倍首相は、自分の後継を決めきれていない、岸田 政調会長を推す声が少ないことを気にしている、との噂が流れる。
自民党内からは、政策の継続性から「菅さんしかいない」という声もある。しかし本人は、全く考えていないと明言。
8月29日(土)
細田派 細田元幹事長
安倍総理の思いを十分に考え、今後の行動は統一して考えていく。
二階幹事長、森山国会対策委員長、菅官房長官が会談、菅氏の動向が影響しそうとの報道。
8月30日(日)
二階派が、午後、自民党本部で幹部が対応を協議。
河村元官房長官
二階派として菅氏を推す流れになりそうか、という質問に対して、空気としてはそういう空気が生まれてきつつあるのではないかと思う。
岸田政調会長が、夕方麻生副総理と会談。
小泉進次郎 環境大臣
今回は立候補しない。
河野さんが出るなら、河野さんを応援する。
河野太郎 防衛大臣
進次郎さんも、総裁候補たり得るひとり、そういう方から、そうおっしゃって頂けるのは、非常にありがたい。皆さんと相談して決めていきたい。(その後、出馬しないことを発表)
8月31日(月)
菅氏が立候補の意向を固め、派閥の幹部らに協力を求めた。支持が広がっている。
麻生派、二階派が支持する意向。
菅氏は、党内最大派閥、細田派の細田元幹事長や、竹下派に影響力を持つ青木幹雄元官房長官らに協力を要請。
岸田政調会長が安倍首相と会談。立候補する意欲を伝え協力を要請。安倍首相は、支持について明言を避けた。
9月1日(火)
岸田氏、石破氏 総裁選への立候補を正式に表明。
党内最大派閥の細田派が、菅氏を支持する方針を固めた。
菅官房長官を支持する派閥は、細田派、麻生派、二階派、竹下派、これでほぼ決まり。
コロナ禍での継続性を重視すべきとの意見から、菅さん支持へ
9月2日(水)
17時 菅氏が立候補を表明
菅氏を支持する派閥は、細田派98人、麻生派54人、竹下派54人、二階派47人、石原派11人。
岸田政調会長は、岸田派47人のみ。
石破元幹事長は、石破派19人のみ。
谷垣グループ17人は自主投票、その他の派閥47人は不明。
菅官房長官の立候補表明を受けて、18時前に、細田派会長、麻生派会長、竹下派会長、各会長がそろって記者会見、菅氏を支持する考えを明らかにした。
注目すべきは、二階派が入ってないこと。二階派の河村建夫元官房長官は、不満を漏らしている。菅さんを支援する気持ちは同じなんだから、一緒に会見をやるべきではないか、そうでないと主導権争いしていると憶測を呼ぶと麻生副総理へ申し入れたと発言。
菅官房長官を支持する派閥は、細田派、麻生派、竹下派、二階派、石原派になる。谷垣グループは自主投票。
自民党総裁選の日程は、8月8日告示、24日両院議員総会で投開票です。
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